議会最終日、生活者ネット 市民と議会 社民党を代表して、2019年度予算について討論しました

生活者ネット 市民と議会 社民党の意見を申し上げます

◇地域公共交通政策について

10年を経過したこまバスだが、様々に課題がありながら、その解決が先延ばしにされてきている。既存バスルートと5分と間隔が開いていない運行経路の問題は、小田急バスに運行ダイヤを改正して頂かないと解決が出来ないことが分かっていながら2年が経過した。予算委員会の質疑では、隣接自治体とも連絡するコミュニティーバスという市民要望に対しても、課題があるというだけで、市として取り組む気持ちがあるのかが聞かれなかったのは残念である。こまバスの補助金は車輛費用を除いて運行経費の補助金1000万である。広く一般のかたを対象にした地域公共交通を担っている交通政策として、予算規模は小規模であるといえ、利用者からの要望は多く満足度は低いといえる。また福祉タクシー券は一般財源で1200万円を投じているが利用者にとっては月額2800円では足りず、利用者の満足度は依然として低い。以上のことから、こまバス運行10年の今、市として移動外出支援の拡充を視野に入れた公共交通政策を持つべきであり、そのための会議体を設置すべきと指摘要望する。

◇和泉多摩川緑地の都立公園化構想について

一級河川沿いで、浸水区域である当該緑地に都立公園をつくる場合、スーパー堤防化は前提とされるのではとの見解もある。予算委員会の質疑では、スーパー堤防に関して、構想案や、構想にも明記してあるとの行政側の説明であった。しかし当初の構想案発表のシンポジウムでは触れておらず、都立公園として都市計画変更してからどんな公園にするか考えて決めるという説明がくり返しなされていたはずである。今回の予算委員会の答弁では市としても整理すべき課題があり、それは東京都としても課題であるとの認識で、新規開通した都道の車道部分を緑地として市内に付け替えねばならないことと、緑地の境界が決まっていない、この二つとのことだが、いつまでの調整が出来るとも分からない状況であるという。このような基本的な入り口で停滞してしまっている状態、当該地区の住民も不安を払拭出来ない状態、であるのは、市が説明責任を果たしていないからだ。和泉多摩川緑地に都立公園をつくる場合、スーパー堤防が前提となるのか、どうか、市民にきちんとした情報提供を行うことを求める。それが出来ないのであれば、市として都立公園化に取り組むことは甚だ無責任であり、担当する職員にも多大な負担をあたえるのみになり、そのことは行政として決して良い状態ではないことを指摘しておく。

◇市民参加について

緑の基本計画改訂に際しての第2回ワークショップは「市民の手で守り、つなぐ狛江市の緑」がテーマであった。「市内で守っていきたい樹林地や農地」や「守るために市民が出来る事のアイデアを出し合う」ワークショップで狛江の緑の保全について参加者から前向きで活発な意見が出された。一方、当日資料には、狛江弁財天池特別緑地保全地区の写真が最初の方に掲載されており、資料作成者が東京都特別緑地保全地区としての位置づけを理解していなかったことがうかがえる。よって話し合いもテーマ以外の、保全地区についての間違った情報によると思われる要望も出たそうであり、困惑したという参加者の声もあった。事前に話し合う課題への情報提供・話し合う範囲などを市民に示し、その上でワークショップに参加していただくという参加方針が欠如していると言わざるを得ない。市民が参加して良かったと思えるようなワークショップの質を担保するために、市民参加、コンサル、ファシリテーターなどそれぞれの在り方と、まずもって担当者の事案に対する知識が重要である。

狛江市政では過去にごみ半減審議会のごみ有料化答申やこまバス検討委員会の「時期尚早」答申、など市民参加での審議会答申提案が活かされなかった事例がいくつかある。和泉多摩川緑地都立公園誘致構想も市民参加の審議会で、地元の意見を聴くべきという提案もありながら、地元の意見を聴くとまとまらないとのことで、地元民が構想案を知ったのは、シンポジウムの時であった。多摩川利活用に関しても「前期基本計画」における「多摩川利活用のルールを定める」と明記されているのは、バーべキュー問題に対応する事であったにもかかわらず、後期基本計画と時を同じく改訂された環境基本計画には「多摩川利活用を重点施策」に置き、それをもって「多摩川利活用計画」をつくるという流れの中で、毎年ローリングをするというやり方もあるのか、駐車場、ドッグランなどに予算をさいて、試行実施といいつつ、整理されないまま、事業が継続され、さらに予算が投入される事態となっている。ここには市民参加による計画策定と計画を実施するという姿勢がないといえる。

31年度は狛江市の今後にとって重要な計画がいくつも検討され、また市長も市民参加市民協働を深化させるとの方針を打ち立てているのであるから、今一度、市民参加の質を上げるために何が出来るか考えて頂きたい。予算と時間をかけて取り組むプラーヌンクスッエレ(日本版市民討議)などの手法を用いての しっかりとした計画策定を強く要望する。

◇狛江らしい水と緑のまちづくり

このまま宅地化が進めば、緑が失われてゆき「武蔵野の原風景を偲ぶ」ことが難しくなる。緑化基金が積み立てられていることから、その使い方については個人所有の樹林地などの買取りを視野に入れ所有者への聞き取りを含め計画的に進めて欲しい。

◇新たな公害ともいわれる香りの害と書く「香害」について

ポスター掲示による周知を評価する。現在も庁舎内でポスターによる周知を行っているが効果が上がっていると実感している。香り成分である化学物質の過敏症であることは正しく理解されず、日常生活が送れずに苦しむ人々がいることから今後は市民に向けたさらなる周知を、特に保育園幼稚園や学校、公共施設内では持続性柔軟剤の使用を控えるなどの周知とともに環境計画における位置付けを要望する。

◇男女共同参画では、狛江高校のアンケートから家事参加への意欲や育児参加への不安などを読み取り、施策へ生かすとの答弁を評価する。

パキスタンで武装勢力の脅威に晒されながら、子どもたちが教育を受ける権利を訴え続け、17歳でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは「女子教育に投資をすれば未来を作れる」と述べた。同じく来日している父のジアウディン・ユスフザイさんは3月24日国際女性会議に登壇「家庭の中の男女平等」の必要性を訴え、男性の育児休暇義務化を提案した。

日本においても、ジェンダーによる役割分担は 家庭内での育児・介護や家事労働を、対価の要らない労働として主に女性に負担させてきた。ヤングケアラーや育児と介護のダブルケアラーには最も大きな負荷が掛かっている為、背景にある性別役割分担に対する意識改革や、家庭内のシャドーワーク平等へむけた理解啓発も必要と考える。

◇多様性を認め合う社会

多様性への理解は社会全体で大きく進んだと言える。たとえば制服については、スカートかスラックスかどちらかを申請して選ぶ形ではなく、ジェンダーレス制服という名前で性別に関係なく制服を自己決定できるという動きが出てきた。海外ではジェンダーニュートラルユニフォームと呼ばれる製服がイギリスなどで導入されつつあるが、日本でも制服メーカーが当事者の声を反映してノージェンダー制服を開発、さらに宗教や障がいなどさまざまな背景に合わせたボーダーレス制服も考えられている。LGBTだけでなく宗教や身体に障がいのある人も含めて様々な背景を持つ人が快適に着用できるデザインが今後増えてくると予想されるが、それこそが多様性を認め合う社会といえよう。世田谷区教育委員会は19年度の新入生向け制服説明資料から男女別の表記を無くした。担当者は「多様性を尊重する姿勢を示していきたい」と話している。

2018年12月人気アニメ「プリキュア」においてはじめて男性がプリキュアに変身して話題を集めた。今までも少女向けと言われるアニメが「女の子もヒーローになれる」というメッセージを発信することはあったが、今回のプリキュアのように「男の子もお姫様になれる」と言い、女らしさ、男らしさにとらわれない、自分は自分らしくいたい という多様性の本質に切り込んでいること、そして幼少期から多様な価値観に触れるという意味で大きな反響があった。

狛江市においてLGBTフレンドリー施策は 社会理解と空気の醸成を待つという姿勢であったと思うが、このことは人権問題として捉えるべきで、差別や偏見を許さないために行政として出来ることは多い、

レインボー宣言にはじまり、パートナーシップ宣誓制度、啓発リーフレット、賛同する企業、店舗、団体、個人に向けたステッカー作成、相談窓口、居場所や交流事業、サポートの為のガイドライン作成、職員研修と職員向け福利厚生充実など、先進事例を参考に具体的施策への一歩を踏み出して頂きたい。

◇子どもを権利の主体者

警視庁で把握している虐待件数は2018年がもっとも多い1384人、そのうち死亡が36人。狛江でも年間約100件の虐待が起きている。家庭という密室の中でこども自身が支配構造と権利侵害に気づくのは難しいため、自らの権利について学ぶ必要がある。中学校卒業式での祝辞のなかに「義務教育を終わられた皆さん」という言葉があるが、教育を受けされる義務が保護者にあるという意味であり、こどもの義務ではない。こどもが権利の主体者であることを本人はもとより周囲の大人も知り、地域全体で共有するためにこどもの権利条例制定を要望する。また通報や警察介入を待つまでもなく、子ども自身からの相談に対応できる体制整備が必要だ。さらにDVにおいては母子一体の支援ができるよう、民間シェルターの委託などによる緊急避難場所の確保が急がれる。2020年世田谷児童相談所からの移管と、狛江における新たな子育て・教育支援複合施設の開設が同時となるため、児童相談行政が滞ることなく行われるよう人員の配置を要望する。

人権擁護の観点で子どもの生活実態調査と集計が報告書としてまとめられたことを評価する。例えば就学援助を受けていない理由として援助が必要であるが申請要件が満たなかったと回答した生活困難層が40%。就学援助で支給されている額と実際にかかった額とで差が大きかったのは学用品。また就学援助制度を知らなかった生活困難層は13,6%。6%から8%の子どもが夜遅くまで子どもだけで過ごした経験がある。 3%~4%の子どもがほっとできる居場所はないと回答している。2018年1月に行われた第7回子どもの貧困対策情報交換会において経済学者の阿部彩先生は、貧困は子どもから何を奪い、何を諦めさせるのかを説き、また自治体の貧困率調査や報告書が目的化していないか、と指摘した。昨年、2018年10月から生活保護基準は引き下げられ生活保護費は段階的に削減されている。一方で今年、2019年10月から消費税は増税され、貧困と格差拡大が深刻さを増すことは避け難い。調査の目的は今後の子ども・子育て支援施策の充実や改善、狛江子育て応援プラン改定の基礎資料にするとあるが、阿部彩先生の言葉の通り、健康や学力そして将来の希望、これらの人生におけるスタートラインの不利が大人になっても続くことが無いように、施策に繋げて欲しい。

◇国保会計の法定外繰り入れについて

国保会計の法定外繰り入れが大幅に削減された理由として、国保加盟者の減少と説明しているが、それほどの減少ではない。それに対し2年続けての値上げの中で、所得ゼロ世帯への削減率を7割から8.5割に拡大することは、暮らしを守り、生きることを支える身近な自治体の姿勢として当然のことであるといえる。

◇マイナンバーを利用したコンビニ交付について

予算委員会の質疑の中で明らかになったように、もし仮に、いつでもどこでも証明書をとれることが歓迎されるとしたら、それは、一刻を争うビジネスチャンスに応える事であろうが、法人の税関係の書類は対象となっておらず、まして個人カードでも課税証明はコンビニで取れても納税証明はコンビニでは取れない、庁舎外交付機でも発行していないというのはビジネスチャンスを生かすという看板には偽りありの制度と言わざるを得ない。

さらに重要なことは、今年度からは交付税措置もなく、全額一般財源による措置となる。よってコンビニでの交付は一枚あたり2180円との試算で、利用者の数に対して費用が高額であり、他の汎用的サービスを廃止することを前提に予算を掛け続けるのは行政として恣意的であるといえよう。

個人に関する情報が 串刺しにされる番号を政府が個人に振ることは、個人情報の保護に照らして 違法である。番号と本人特定できる4情報を結び付け、特定個人情報として民間活用を推進していく本制度は、当初から、個人の財政状況とともに、どんなタレントを持った個人がどこにいるかを 権力が特定したい制度であるといわれてきた。税徴収の公平性を言うのであれば、法人カードこそ管理すべきであるが、法人は生まれては消えていくので完全に管理することは不可能である。もともと中途半端な設計のもとにスタートした制度であり、これ以上貴重な税金をかけることを認めるわけにはいかない。マイナンバー制度自体を廃止すべきであるが、まずはコンビニ交付を即刻廃止すべきであり、コンビニ交付予算を削除することに賛成である。

以上のことから 生活者ネット 市民と議会 社民党は 動議案に賛成し、原案に反対と致します。

本会議ですべての予算案が可決されました。