生まれ育った環境に左右されない未来のために② 〈3月議会一般質問〉
【貧困は子どもから何を奪うのか】
大田区が首都大学東京の阿部彩教授らと行った生活実態調査は「剥奪指標」(子どもたちがなにを奪われているか)に焦点を当てたものです。剥奪指標には以下の3つがあるとしています。
- 物的資源の欠如
- つながりの欠如
- 教育・経験の欠如
また、子どもとの経験や消費行動、所有物に関する 14項目に関して、経済的な理由で与えられていないとするものが3つ以上あると回答した世帯を困窮世帯としています。
14項目とは
①海水浴に行く
②博物館・科学館・美術館などに行く
③キャンプやバーベキューに行く
④スポーツ観戦や劇場に行く
⑤毎月お小遣いを渡す
⑥毎年新しい洋服・靴を買う
⑦習い事(音楽・スポーツ・習字等)に通わせる
⑧学習塾に通わせる
⑨1年に1回程度家族旅行に行く
⑩クリスマスのプレゼントをあげる
⑪正月のお年玉をあげる
⑫子どもの年齢に合った本がある
⑬子ども用のスポーツ用品・おもちゃがある
⑭子どもが自宅で宿題をすることができる場所がある
剥奪指標の高い子どもは、自己肯定感を持ちにくい。大人になるのが楽しみではないとアンケートに答えています。つまり、貧困によって子どもは我慢することを早くから覚え、結果として子どもを早く大人にしてしまう。貧しさは物質的なものだけでなく将来への希望、子どもの未来を奪うという事が調査結果から見えてきました。
狛江市においても困難を有する子ども、若者と、生活が困窮している家庭を一体的に支援するため、剥奪指標を使った調査をすべきではないかと質問しましたが、児童青少年部からは「必要性も含め実施については検討していきたいと考えている」との答弁でした。
【子どもの貧困対策 学校の役割とは】
狛江市総合教育会議では市長部局と教育委員会が「支援を必要とする子どもに対する学校の役割について」協議・調整を平成27年の時点で行っています。29年3月現在、学校と福祉保健部、児童青少年部との情報共有や連携はどのように行われているか、サポートを必要とする子どもとその家庭を確実に支援につなげる取り組みが出来ているか質しました。教育部長から「一口に貧困といっても経済的なものからネグレクトのようなものまで様々あります、また現場の先生がたが日々出来うる限りの対応を行っていることも事実です。欠食への組織的対応の方向性も決まりつつあります。総合教育会議の場で狛江市の関係部署それぞれが持ちうる資産と施策で連携し、家庭ぐるみの支援を確認しました」との答弁がありました。学校は子どもに勉強を教えるところであって、貧困は関係ないといった対応が今後は見られなくなることを強く望みます。
現在の日本では受けた教育がその後の就労や所得に大きく影響します。いまや大学生のふたりにひとりは奨学金という名の多額の借金を背負い、学生時代はアルバイトと学業の両立に苦しみ、大学を出ても正規雇用される保証はないといった現実を抱えています。それでも奨学金は返済しつづけなければなりません。生まれ育った環境に左右されず、経済的な理由で進学を諦めなくても良いようなしくみ、また勉強したいときに学校に戻れる、そして学校でなくても学べるしくみについても考えていくべきだと思います。(山本あき子)